Case
事例
当職が保佐人となっている方の事例です。
被保佐人(以下「Aさん」と言います。)は自宅で一人暮らしをしています。
普段は電話で様子を確認し、月に一度、自宅に伺って安否確認を行っています。
先日、当職がAさんの自宅に伺うと、テーブルの上に置いてある郵便物の中に見慣れない請求書が混じっていることに気づきました。
その請求書についてAさんに尋ねると、通信販売で購入した物品の請求書とのことでした。
Aさんに購入した物品について尋ねると、Aさんの生活では使わないような物であり、Aさんも必要ないし、なぜ購入してしまったのか分からないとおっしゃっていました。
結果
通信販売会社に連絡をし、Aさんが被保佐人であることを伝え、物品の購入を取り消しました。
コメント
成年後見制度において判断能力が著しく不十分な方に適用されることになるのが『保佐』というものです。
判断能力が著しく不十分ではありますが、全く判断できないというわけではありません。
そのため、被保佐人は法律で定められた財産上の重要な行為を行う際に、保佐人の同意が必要になってきます。
もし、保佐人の同意を得ずに上記の行為を行ってしまった場合、保佐人及び被保佐人が、後で取り消すことができます。
保佐人の同意が必要な法律で定められた財産上の重要な行為とは以下のとおりです。
民法第13条1項
1.元本を領収し、又は利用すること。
2.借財又は保証をすること。
3.不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
4.訴訟行為をすること。
5.贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成15年法律第138号)第2条第1項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
6.相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
7.贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
8.新築、改築、増築又は大修繕をすること。
9.第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
10.前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
通信販売に関しては3.不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。を根拠にして取り消すことになります。
なお、保佐人であっても被保佐人が行った日用品の購入やその他日常生活に関する行為については取り消すことができません。
また、取消後には、被保佐人の手元に残っている利益(現存利益)を返還することで足ります。
今回のケースでは被保佐人の手元に物品がそのままの状態で残っていたため、その物品を通信販売会社に返還し、請求書の費用は支払わずに終えることができました。
その他相談解決事例