Case
事例
当職が任意後見受任者となっている方の事例です。
Aさんを委任者、当職を受任者とする任意後見契約を締結していました。
任意後見契約締結後、当職はAさんの任意代理人としてAさんと関わってきました。
その後、Aさんの判断能力が低下してきたことにともない任意後見契約の発効を検討しました。
しかし、任意後見契約締結から10年近くが経過しており、契約当時とはAさんを取り巻く環境が大きく変化していたため、当初任意代理契約で定めた代理権では現在の状況に対応できない可能性があることが判明しました。
結果
家庭裁判所で法定後見等開始申立を行い、保佐人に就任しました。
コメント
任意後見契約では、将来、判断能力が低下した際に備えてあらかじめ自分自身で後見人となってもらう方を選んでおくことが可能です。
任意後見契約締結の際には任意後見人になってもらう方(任意後見受任者と言います)とどういった代理権を付与するかを契約の中で決めておきます。
そして、この任意後見受任者と代理権については一度任意後見契約を締結すると変更することができなくなります。
もし、変更したいとなると、締結した任意後見契約を解約し、新たに任意後見契約を締結し直す必要があります。
今回のケースでは、Aさんの判断能力が任意後見契約締結時と比べて低下していることから、現在の任意後見契約を解約し、新たに任意後見契約を締結することが難しい可能性がありました。
その理由としては、任意後見契約は公正証書で作成することが必要であるため、公証人に任意後見契約の締結できないと判断されると任意後見契約の解約も作成もできなくなってしまうからです。
また、任意後見契約を締結している場合、原則として法定後見よりも任意後見契約が優先することとされています。そのため、家庭裁判所は本人の利益のために特に必要があると認めるときに限り法定後見開始の審判をすることができるとされています。
今回のケースではAさんと話し合い、法定後見制度の利用をすることに決まり、当職が法定後見開始申立書類を作成しました。
法定後見の申立は本人や四親等内の親族ができるほか、任意後見受任者からも申立をすることが可能です。
今回は本人の判断能力が医師の診断書によると保佐相当であったため、本人が申立人となり、当職が申立書類を作成することとなりました。
申立書類には法定後見制度を利用する必要性を記載し、家庭裁判所に説明をしました。
その結果、保佐開始の審判がされ、無事に当職が保佐人に選任されました。
なお、法定後見の場合、だれが成年後見人等になるかの判断は家庭裁判所がするため、申立の理由によっては任意後見受任者が成年後見人等に選任されない可能性もあるので注意が必要になります。
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