Case
事例
8年前、公証役場で公正証書遺言を作成しました。
内容は、『夫へ全ての財産を相続させる。』というものでした。
しかし、その後、夫が認知症となり施設へ入所しました。
私も病気がちで入退院を繰り返している状態です。
現在、昔から懇意にしていた甥夫婦に病院への送迎や身の回りの世話をしてもらっています。
「このまま私が亡くなった場合、現在世話になっている甥夫婦に全く財産を渡すことができません。
公正証書遺言を書き直したいのですが、可能でしょうか?」
結果
8年前に作成した公正証書遺言の内容を全部撤回し、『甥夫婦に全ての財産を2分の1ずつ遺贈する。』旨の公正証書遺言を新たに作成しました。
コメント
ご夫妻の置かれている状況が、8年間で一変しました。
そこで、現状にあわせた公正証書遺言を新たに作成し、前回作成した公正証書遺言の内容を全て撤回しました。
遺言は、いつでも自由に撤回・変更することができます(民法第1022条)。
遺言が撤回されると、撤回された遺言の効力は発生しないことになります。
ちなみに、遺言の撤回・変更をできるのは遺言をした本人のみとなり、代理人によって行うことはできません。
遺言を撤回した遺言者が、撤回行為を撤回したとしても、原則、当初の遺言(撤回前の遺言)の効力は復活しません(民法第1025条)。但し、その撤回行為が詐欺・脅迫による撤回行為の場合を除きます。
遺言の撤回は、遺言の方式に従って行うのが原則であるが、前の遺言と抵触する新しい遺言書を作成したり、遺言と抵触する法律行為(ex.相続させる予定の不動産を生前に処分など。)を行った場合は、抵触する部分については前の遺言を撤回したものとみなされます(民法第1023条)。
また、遺言者が故意に遺言書を破棄した場合にも、遺言を撤回したものとみなされます(民法第1024条)。
撤回の方法として、自筆証書遺言であれば、手元にある自筆証書遺言を破棄すれば遺言を撤回したことになります。しかし、公正証書遺言の場合は、遺言書の原本が公証役場に保管されていますので、手元の公正証書遺言を破棄しただけは撤回したことになりません。
公正証書遺言の撤回については、当初作成した遺言を撤回する旨の遺言書を作成する必要があります。
ちなみに遺言の撤回・変更は、前の遺言書の方式にとらわれませんので、公正証書遺言を自筆証書遺言によって撤回・変更したりすることは可能です。
その他相談解決事例