相談解決事例

Case

特別代理人の選任が必要な場合の相続登記

事例

親が亡くなり、財産に不動産があります。相続人は私と知的障がいがある弟の二人のみで、私は弟の成年後見人です。相続の名義変更はどのように進めればよいでしょうか。

結果

裁判所に特別代理人を選任してもらい、無事に名義変更をすることができました。

コメント

まず、相続人の中に障がいがある方がいらっしゃる場合、大きく分けて次の2パターンがあります。

 

1、身体障がいがある場合

2、知的障がいがある場合

 

 次に、相続による名義変更をするにあたって、原則として、相続人全員で、遺産分割協議を行いますが、遺産分割協議は、相続人全員が、行う行為や権利や義務について、きちんと理解できる判断能力を持っていなければ、無効となってしまいます。

 

1の身体障がいがある場合については、判断能力に問題がないかぎり、特別な対応をすることなく、障がいがあるご本人が、遺産分割協議に参加することができます。

 

一方で、2の知的障がいがある場合には、注意が必要で、さらに次の2パターンがあります。

 

①判断能力が十分にある場合

②判断能力が不十分な場合

 

障がいの程度や内容は人それぞれですので、判断能力が十分か不十分かについては、個別具体的に判断されます。

 

①の場合は、きちんと判断能力があるため、原則として特別な対応をすることなく、通常通りに手続きを行うことができます。

 

②の場合は、判断能力が不十分なので、相続についての意思表示を自分で行うことができません。この場合は、家庭裁判所に申し立てをし、成年後見人という、ご本人の代わりに法律行為をする人を選んでもらいます。遺産分割協議には、ご本人に代わって成年後見人が入り、成年後見人が署名押印をします。

成年後見人には、司法書士などの専門家がなるイメージが強いかもしれませんが、親族がなることもできます。兄弟など、遺産分割協議に参加する他の相続人が、成年後見人になっている場合には、さらに注意が必要になります。

 

例えば、父親が亡くなり、相続人が子供二人だけで、弟さんの方に知的障がいがあり、お兄さんが成年後見人になっているケースを想像してみてください。

この場合に、そのまま遺産分割協議を行ってよいとすると、お兄さんの署名押印も、弟さんの署名押印も、どちらも成年後見人のお兄さんがすることになってしまいます。これでは、弟さんの判断能力が低いことをいいことに、お兄さんが自分に都合のよい協議をでっち上げ、勝手に署名押印をしてしまう可能性があります。障がいがある弟さんの利益が脅かされており、保護が必要な場面です。これを「利益相反」状態といいます。

 

このように、ご本人と成年後見人の利益が相反している場合には、家庭裁判所に「特別代理人」という人を選んでもらい、選ばれた特別代理人が、障がいがあるご本人に代わって、署名押印をします。特別代理人の選任申立てには、遺産分割協議書の案などの必要な書類を、予め裁判所に提出するなどして、審査を受けなければいけません。

 

今回の事例は、まさにこの特別代理人を、家庭裁判所に選任してもらわなければいけないケースでした。当然、通常の相続手続きよりもやや複雑になりますが、特別代理人を選任してもらい、無事に不動産の名義変更まで完了することができました。

 

もし何か心当たりや気になることがございましたら、ぜひ一度弊所までご相談ください。

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