相談解決事例

Case

被保佐人が賃貸借契約をするにはどうすればいいのでしょうか?

事例

当職が保佐人に就任している事例です。

被保佐人のAさんは長期間入院していましたが、退院することになりました。退院後は、作業所に通いながら一人暮らしをすることになりましたが、Aさんには自宅がなく、住居を借りることになりました。

結果

保佐人がAさんを代理し、賃貸借契約を締結しました。

コメント

成年後見制度には後見、保佐、補助の3つの類型があります。

後見には代理権がありますが、保佐・補助については当然には代理権がありません。

これは、保佐・補助の場合、後見よりも判断能力があり、被保佐人・被補助人の自己決定権を尊重するためです。

 

保佐・補助の場合、被保佐人・被補助人の行為について保佐人・補助人が同意をし、同意しない場合は被保佐人・被補助人の行為を取り消すことができる同意権があります。

保佐の場合、民法第13条に規定されている以下の行為について同意権があります。

 

・元本を領収し、または利用すること

・借財または保証をすること

・不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること

・訴訟行為をすること

・贈与、和解または仲裁合意をすること

・相続の承認もしくは放棄または遺産分割をすること

・贈与もしくは遺贈を拒絶し、負担付贈与もしくは負担付遺贈を承諾すること

・新築、改築、増築または大修繕をすること

・第602条に定める期間を超える賃貸借をすること

上記の行為について、被保佐人が保佐人の同意なしに行った場合、保佐人はその行為を取り消すことができます。

 

また、保佐人には当然に代理権は付与されていませんが、家庭裁判所に対し、代理権付与を求めることができます(ただし、本人以外のものが代理権付与の審判を請求する場合は本人の同意が必要です。今回のケースで請求するならば、被保佐人の同意が必要となります。)。

 

今回のケースの建物の賃貸借は民法第602条に定める期間(建物の場合3年)を超える賃貸借であるため保佐人の同意が必要になります。

 

そして、保佐人に代理権がない場合ですと、被保佐人自身が賃貸借契約を締結し、その行為に対し、保佐人が同意をすることになり、契約自体は被保佐人が自分ですることになります。

 

それに対し、賃貸借に関する代理権が保佐人に付与されていれば、保佐人が被保佐人を代理して賃貸借契約を締結することが可能となります。

 

今回のケースでは、保佐人に代理権が付与されていましたので、当職と被保佐人のAさんと相談の上、物件を決め、当職が直接、賃貸借契約を締結しました。

 

なお、賃貸借契約を締結する際には家庭裁判所の許可は必要ではありませんが、解約をする際には家庭裁判所の許可が必要になるので注意が必要です。

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