相談解決事例

Case

成年被後見人のお墓じまいについて

事例

当職が成年後見人に就任している方についての事案です。その方(以下「Aさん」といいます。)は、以前に亡両親と亡姉が納骨されているお墓の管理を行っていましたが、現在は管理ができていない状態でした。

 

また、Aさんは数年前に一人息子である長男を亡くしており、兄弟もすでに亡くなっていました。相続人となるのはAさんの妻(以下「Bさん」といいます。当職が保佐人に就任しています)と、遠方などに住んでいることから疎遠な状態である甥や姪の方でした。そのため、Aさんの亡き後にAさんのお墓を管理する者がいないことから、お墓じまいを行い、一人息子が納骨されているお寺への永代供養をBさんが希望されました。

結果

当職は、生前にAさんのお墓じまいの手続きを行う必要があり、その手続きに関する費用を本人から支出することに問題がないか確認する報告書を作成し、家庭裁判所に提出しました。そして、家庭裁判所に相談した結果、推定相続人への意思確認を行った上で成年後見人の裁量で手続きを進めて下さいとのことでした。そして、当職はお寺や石材店とやり取りを行い、お墓じまいと永代供養の手続きを行いました。

コメント

成年後見人は、被後見人の財産を適正に管理する義務を負う一方で、被後見人を代理し、被後見人の財産を処分する権限が与えられています。被後見人の財産を処分する必要が生じた場合、成年後見人は自己の責任において被後見人の財産を処分することになります。処分に当たっては、その必要性、より安全な方法の有無、被後見人の現在の財産額を考慮して、被後見人に損害を与えないように注意する必要があります。万が一、被後見人に損害が生じた場合、成年後見人は賠償責任を負います。

 

当職は、お寺や石材屋に見積もりを確認したところ、墓石の撤去及びご遺骨の永代供養に100万円以上の費用がかかるとのことでした。祭祀財産であるお墓を成年後見人が処分することができるのか。また、その処分を妻であるBさんが希望しながらも、高額な処分費用を所有者であるAさんから支出することができるのかについて疑義がありました。

 

そのため、当職は家庭裁判所の判断を仰ぐため、お寺への永代供養の費用や墓石を撤去する際の費用の金額、支出が必要となった経緯、本人の現在の財産状況などを記載した報告書を作成し提出しました。すると、家庭裁判所から、Aさんの推定相続人にも手続きの経緯を説明し、意見の確認を行ってくださいの指示がありました。

 

そこで、当職は推定相続人にお手紙を送り、今回のお墓じまいの経緯や必要性を説明し、その上でお墓じまいについて賛成か反対かの意思確認をとりました。その結果、全ての推定相続人から賛成の意見をいただいたので、当職はお寺や石材店に依頼をし、性根抜き、墓石の撤去及びご遺骨のお寺への永代供養を行いました。

 

このように、成年被後見人の財産を処分するにあたって、成年後見人だけでの判断に困ることがあれば、事前に家庭裁判所にご相談されることをおすすめいたします。

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