Case
事例
15年前、父が亡くなった際、実家の名義を母に変更しました。
その母も、10年前に亡くなりました。
その後、現在に至るまで、母名義にしたまま、実家を放置していました。
最近、久しぶりに実家を訪ねてみると、建物の痛みは激しく、草も生え放題の状態になっていました。
このまま放置すると、さらに近隣の方々の迷惑になるので、不動産の売却を検討しています。
売却するに当たって、どういった手続きが必要でしょうか?
ちなみに私には兄がいますが、20年前から音信不通の状態です。
結果
1、音信不通の兄に『相続手続きに協力して頂くお願いの手紙』を出し、相続手続きに協力して頂くことになった。
2、依頼者単独名義の相続登記をおこなった。
3、不動産の売却手続きをおこなった。
4、遺産分割協議に従って、売却代金を依頼者及び兄で2分の1ずつ相続した。
コメント
依頼者のお兄様は、亡くなったご両親及び依頼者とは、20年以上全く音信不通の状態になっていました。
そこで、当事務所より、音信不通のお兄様へ相続手続きにご協力頂きたい旨の手紙を送付しました。
1週間後、お兄様から相続手続きに協力するとのお返事がありました。
また、依頼者より『兄に売却手続きの件でなるべく負担をかけたくない。』との要望がありましたので、代表者1名を定め、代表者が売却手続きを進めていくことにしました。
遺産分割協議の方法として、換価分割の方法をとることにしました。
協議の内容は、
『1、不動産名義を母→依頼者に名義変更(相続登記)し、依頼者が不動産を売却する。
2、売却代金を依頼者及び兄で各2分の1ずつ取得する。』となりました。
そして、協議内容に従って、相続登記及び売却手続きをおこない、依頼者からお兄様へ売却代金の2分の1を送金し、無事手続き完了となりました。
ちなみに、遺産分割の方法としましては、以下の3つの方法があります。
1、現物分割・・・相続財産を現物のまま、各相続人に分配する方法
2、代償分割・・・相続人のうち1人又は数人が相続財産を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法
3、換価分割・・・遺産分割協議の結果、不動産を売却処分し、売却代金を相続人間で分配する方法
換価分割で手続きを進める場合、以下の流れとなります。
1、共同相続人のうち代表者1名又は相続人全員で相続登記を行う。
2、代表者1名又は相続人全員で売却手続きを行う。
3、売却代金を各相続人に分配する。
今回のケースの場合、形式上登記簿には、代表相続人1名しか記載されません。
そのため、売却代金を他の相続人に分配することで、贈与に該当すると考えられる方もいます。
しかし、換価分割の場合、共同相続人のうちの1人の名義で相続登記するのは、単に換価処分のための便宜的なものであり、その売却代金が遺産分割協議の内容に従って実際に他の相続人に分配される場合、贈与税の課税が問題になることはありません。
つまり、遺産分割協議書に換価分割をする旨をきっちり明記していれば、贈与税課税の問題は起こりません。
ですので、換価分割をおこなった場合、不動産の売却益に対する譲渡所得税について、課税されるケースに該当するか否かを検討する必要があります。
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