相談解決事例

Case

過去に相続した不動産の管理が大変なので、弟の名義に変えたいです。

事例

以前、父が亡くなり、相続人全員で遺産分割協議をして、田を相続しました。

ところが、遠方に住んでおり、田の管理が困難です。

遺産分割協議をやり直して、田の名義を弟に変えることはできますか。

 

結果

遺産分割協議をやり直すことで、依頼者名義の所有権の登記を抹消して亡くなったお父様名義に戻した後、再び相続によって田の名義を弟様に変えることができました。

コメント

今回、主な選択肢は二つありました。

一つは、遺産分割協議をやり直し、名義を変えるという方法。もう一つは、売買や贈与により、名義を移すという方法です。

具体的には、前者は、①所有権抹消登記、②相続を原因として所有権移転登記をします。一方、後者は、①売買又は贈与を原因として所有権移転登記をします。

 

前提の知識として、遺産分割協議のやり直しは、簡単ではありません。一度有効になった遺産分割協議を一部の相続人だけで覆すことはできず、相続人「全員」で再協議する必要があります。

また、相続人全員で再協議ができたとしても、前回の遺産分割から今回の再協議までの間に、他の人に売却され、登記まで備えられていた場合には、その部分は取り戻すことはできません。

さらに、別途、登記費用や不動産取得税が発生したり、再協議による財産の移動は「贈与」として扱われるため、贈与税もかかる可能性があります。すでに相続税の申告納税を終えている場合には、協議をやり直すと、相続税と贈与税で二重課税になる恐れもあります。

このように、すでに終えた遺産分割のやり直しというのは、大変になる場合があるのです。

 

そうすると「遺産分割のやり直しではなく、売買や贈与をすればいいじゃないか!」と言いたいところなのですが、今回はもう一つ問題があります。不動産が「市街化調整区域の田」であることです。

市街化調整区域というのは、使用や譲渡に制限がかかる土地のことです(以下、調整区域)。

そして、田や畑は、農地というグループに属します。農地は、重要な産業である農業に欠かせないものなので、守らなければいけません。きちんと管理ができる人のものになるように、役所からチェックが入ります。その結果、調整区域である田に関しては、いくつもの要件をクリアし、役所から許可をもらえた人にしか譲渡することはできません。それゆえに、調整区域である田や畑の売買・贈与は、かなり面倒なのです。

ただし、譲る人と受ける人、両者の意思で成立する売買・贈与と違って、被相続人の死亡と同時に自動的に生じる相続の場合には、許可を得る必要はないというルールになっています。

 

そういうわけで、様々な事情やお客様のご要望を考慮し、今回は遺産分割協議のやり直しを選択(①所有権抹消登記+②相続を原因として所有権移転登記)することで、円滑に名義を変更することができました。

 

不動産の名義の変え方ひとつでも、様々な方法や問題となることがあります。お客様ご自身の状況にピッタリの方法について気になった際には、一度梅谷事務所にご相談ください。

その他相談解決事例