Case
事例
ある日突然、東北地方にあるA市から『空き地及び空家等の適正な管理について(依頼)」という書類が私宛に届きました。
書類には、『近隣より相談があり、あなたの母名義の土地の立木が隣地へはみ出し、隣家の屋根を壊す恐れがあります。つきましては、早急に対処をお願いします。』との内容が記載されていました。
写真も同封されており、確かに隣家の屋根を覆うくらいの大きな大木が写っていました。
私は、そもそも母名義の土地があることなど全く知りませんでした。
突然、このような書類が届いて、大変困惑しております。
どのように対処したらよいでしょうか?
結果
依頼者は相続放棄をしました。
コメント
依頼者の手元にある資料をもとに、土地の登記情報を取得したところ、名義は依頼者の母になっていました。
さらに、公図等取得し、Google Map等で場所の特定を行いました。
依頼者に確認しましたが、依頼者はその土地の存在を知りませんでした。
依頼者の母は、専業主婦で死亡した当時何も財産はありませんでした。
そのため、相続人間で単純承認事由(相続することを認めるような事由)に該当するような行為は行っていませんでした。
現状を踏まえ、依頼者と相談した結果、相続放棄の手続きをとることにしました。
理由としては、以下のとおりです。
・依頼者は80代と高齢、兵庫県在住かつお子様がいらっしゃらない
・該当の土地を自身で維持管理していくことができない
・該当の土地を相続したとしても、後継者がいないので、維持管理することができない
・今後、故郷であるA市に帰る見込みがない
戸籍を確認したところ、依頼者の母は昭和50年に死亡していました。
原則、相続放棄は被相続人が亡くなったのを知った日から3ヶ月以内にしなければなりません。
3ヶ月の期間を計算するにあたって、相続放棄の熟慮期間の起算点は、
①相続開始の原因事実の発生を知り、かつ
②そのために自己が相続人になったことを覚知した時(大決大正15.8.3民集5巻10号679頁)。
となります。
ただし、3ヶ月経過した後、相続債権者等からの請求を受けて、初めて被相続人の債務の存在を知ることもあります。
そういった場合は、亡くなってから3ヶ月以上が経過していたとしても、債務の存在を知らなかった場合など一定の要件を満たせば、自らが相続人であると知り、または借金の存在を知った時から3ヶ月以内に相続放棄の申述手続きをとれば良いとされています。
今回は3ヶ月経過後の事例に該当したため、家庭裁判所に対して、亡くなってから3ヶ月経過後に申立をするに至った経緯を詳細に説明した文書とともに、相続放棄の申述を行い、無事受理されました。
3ヶ月経過後の事例の場合、事実関係を積み上げ、綿密に練った申述書を作成する必要があります。
原則、被相続人が何十年も前に死亡してから、相続放棄の申述を行う場合、慎重に内容を精査する必要があり、すぐに受理されるというわけではございませんので、ご注意下さい。
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