Case
事例
私(女性)は、母、兄とともに3人で生活してきました。兄も私も未婚です。
兄は、重度の身体障害者で、5年前から病院で入院しており、今後も実家に帰宅する見込みはない状態です。私も、身体に障害があり、働くことができない状態です。
先日、母が医師から末期がんの宣告を受けました。余命2ヶ月と言われています。現在、小康状態ですが、いつ状態が悪化するかわからない状態です。
母は、自分が死んだ後の相続手続きなどを誰かにお願いしたいと言っています。
そういったことは可能でしょうか?
結果
お母様が遺言公正証書を作成され、司法書士が遺言執行者に就任しました。
コメント
お母様は、医師からの宣告後、自分が亡くなった後のことがとても心配になられたそうです。
お子様お二人の金銭管理、身の回りの世話など、全てお母様がされていたとのことでした。
お子様がお二人とも身体障害者で動くことができないため、自分が亡くなった後の相続手続きをどうしたらいいのか、相当悩まれていたとのことでした。
この度、遺言公正証書を作成され、その中で、司法書士を遺言執行者に定められました。
遺言執行者の職務は、遺言内容を実現する事です。
その権限は、遺言の執行に必要な範囲での一切の行為です。
遺言執行者の具体的な職務は、個々の遺言事項によって決定され、具体的な遺言執行者の職務としては次のようなものが考えられます。
□相続人調査
□財産目録の作成と交付
□財産目録を作成し、相続人(遺留分権利者含む)に交付
□相続人間の調整、連絡
□具体的な遺言内容の実現
預貯金、株、不動産、車、貸金庫など
□関係各所との調整
□必要書類の取得
□受遺者への承継、名義変更
などがあります。
また、遺言執行者をつけるメリットして、以下の点が挙げられます。
①相続人に負担をかけなくて済む
遺言内容を実現する手続は、実はとても複雑で面倒なものです。
そこで、遺言の中で、遺言執行者を指定しておけば、複雑な手続きの一切を遺言執行者が代理して行うので、多大な時間と手間をかける心配が不要となります。
②遺言内容を実現する事が出来る
遺言執行者がいれば、遺言の執行を妨げる行為は一切禁止されますので、遺言の内容が実現できます。
例えば、相続人の一人が、勝手に預貯金を解約したり、不動産の名義を変更したりすることが出来ません。
③相続人全員の署名押印がなくても手続きを進めることが出来る
専門職が遺言執行者でなければ、仮に遺言執行者を定めていたとしても、金融機関によっては、相続人全員からの署名押印を求められる場合があります。
※専門職である遺言執行者を定めたとしても、まだなお、相続人全員の署名押印を求めてくる金融機関や証券会社も存在します。
④どうしても遺言執行者が必要になった場合のリスクに備えることが出来る。
遺言を執行する場合、どうしても、後で遺言執行者が必要になる場合があります(遺贈の場合で、一部の相続人の協力が得られない場合等)。そんな時、家庭裁判所で遺言執行者を選んでもらう事は出来ますが、手続きが迂遠であり、この手続き自体、相続人間での紛争に発展する事が少なくありません。
この度は、遺言公正証書(案)を作成するに当たって、お母様に遺言執行者の役割を説明したところ、遺言執行者を定めたいと仰ったので、司法書士を遺言執行者に指定した遺言公正証書を作成致しました。
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