相談解決事例

Case

会社の取締役個人の借り入れ時に、会社の不動産を担保にすることはできますか。

事例

会社の取締役個人が銀行から借り入れをする際に、会社の不動産を担保にすることはできますか。

結果

代表取締役が押印をした株主総会議事録と会社の印鑑証明書を添付することにより、会社の取締役個人を債務者とする抵当権を、会社の不動産に設定することができました。

コメント

銀行から借り入れをする際などには、当然、自分の不動産だけでなく、他者の不動産も担保にすることができます。ですので、取締役個人のために、会社の不動産を担保にすることも可能です。

 

ただし、注意が必要です。

 

結論から申し上げますと、担保を差し出す会社の株主総会または取締役会の承認決議が必要になります。

取締役が法律上の取引を行うときに、自身が役員になっている会社に不利益を及ぼす場合には、株主総会または取締役会の承認決議が必要になるのです。

 

というのも、会社法の355条に「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。」というルールがあるのです。この「取締役は、株式会社のために職務を忠実に行わなければならない」という義務を「忠実義務」といいます。

 

今回のように、取締役個人の債務を担保するために、会社の不動産に抵当権などの担保権を設定する行為は、会社の財産を脅かすため、会社に不利益を及ぼす場合に当たります。そういうわけで、今回のケースでも、取締役の債務を担保するために会社の不動産に抵当権などの担保権を設定することについて、株主総会または取締役会の場で、承認を得なければいけません。

 

次に、手続き面の話になりますが、実際に登記を申請する場合には、上記の承認を得たことを証明しなければいけません。

具体的には、承認決議をした株主総会議事録または取締役会の議事録を、法務局に提出します。その議事録には、株主総会議事録であれば作成者、取締役会議事録であれば、出席した取締役と監査役の押印が必要です。

そのため、議事録に加えて、これらの者の印鑑証明書も付けなければいけません。代表取締役が押印した場合には、会社の印鑑証明書を付けます。一方、平の取締役や監査役が押印した場合には、個人の印鑑証明書を付けます。

 

今回は、取締役会を設置していない会社であったため、取締役会の議事録ではなく、代表取締役が押印をした株主総会議事録と会社の印鑑証明書を提出し、無事に抵当権の設定登記を行うことができました。

 

このように、会社が絡む取引の場合には、個人対個人の手続きとは異なる問題が生じることもあり、時に一筋縄ではいかないこともあります。

もし心当たりや気になることがございましたら、ぜひ一度弊所までご相談ください。

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