相談解決事例

Case

亡父の相続手続きに関わりたくないのですが…

事例

昨日、姉から「父が2週間前に亡くなりました。葬儀も全て済ませました。父の遺産(不動産及び預貯金)の相続手続きをしたいので、協議書に実印を押して、印鑑証明書とともに、返送して下さい。」という内容の手紙が突然届きました。

協議書の内容は、姉が全ての財産を引き継ぐ旨の内容になっていました。

 

そもそも、弟である私が中学生の頃、両親が離婚し、姉は父に、私は母に、それぞれ引き取られました。両親が離婚しても、父と姉とは定期的に顔を合わせてました。

しかし、私が結婚して以後、姉との関係が悪くなり、だんだん父の元を訪れる機会も減っていき、ここ10年くらいは、全く訪れることができていませんでした。

 

今回、このような手紙が突然届いてびっくりしましたが、姉も独身なので、父の財産は全て譲りたいと考えています。

こういった場合、相続放棄と事実上の相続放棄(遺産の放棄)があると聞きましたが、どう違うのでしょうか?

結果

弊所にて相続放棄の手続きを受任し、無事、依頼者は相続放棄をすることができました。

コメント

当初、お姉様の対応に対して、かなりご立腹だった依頼者も、お話をするうち冷静になられ、お姉様の現状などを踏まえ、亡父の財産を相続しないこととなりました。

ただし、相続しない場合の選択肢として、事実上の相続放棄(遺産の放棄)がいいのか、相続放棄がいいのかについて、悩まれていました。

 

相続財産を放棄する場合、大きく分けて2つのパターンがあります。

 

①事実上の相続放棄(遺産の放棄)

事実上の相続放棄(遺産の放棄)については、よく以下のようなお話をされる方がいらっしゃいます。

『亡父の相続のときは、遺産を全て相続放棄して、兄に全て譲った』などの場合です。

ご本人に詳しくお伺いすると、裁判所に相続放棄の手続きをした記憶はないとのことでした。

そうなりますと、この場面で仰っている『相続放棄』は、おそらく、遺産分割協議内において、自己の取得分を『0』とする旨の合意をする『事実上の相続放棄』である可能性が非常に高いです。

事実上の相続放棄とは、大きく分けて以下の4つのパターンがあります。

 一、遺産分割協議内において、自己の取得分を『0』とする旨の合意をする方法

 二、自己の相続分に相当する生前贈与を受けたものとして特別受益証明書を作成する方法

 三、相続分を譲渡する方法

 四、相続分を放棄する方法

 

これらの方法は、主に、特定の相続人に相続財産を集中されることを目的としてなされることが多いです。

メリットとしては、相続放棄のように、3ヶ月という期間の制限はありません。

また、家庭裁判所での手続きも必要ありません。

但し、デメリットとしては、相続財産中にマイナスの財産があった場合、法定相続分に応じて債務の負担をすることになりますので、注意が必要です。

 

②相続放棄

相続放棄とは、プラスの財産とマイナスの財産の全ての相続を拒否することです。相続を放棄することにより、初めから相続人とならなかったことになります(民法939条)。

また、相続放棄をする場合は、家庭裁判所に対して、相続放棄の手続き(家庭裁判所に申述書を提出して受理審判を得ること)をする必要があります。

相続放棄のメリットとしては、初めから相続人とならなかったとみなされることになるため、被相続人の残したマイナスの財産(借金等)から解放されることになります。

また、相続放棄は、各相続人が単独で行うことができるので、他の相続人の同意などが必要ありません。デメリットとしては、プラスの財産があっても相続することができなくなことが挙げられます。

 

今回のケースでは、最終的な依頼者のご意向として、亡父の相続の手続きについて一切関わり合いを持ちたくないとのことでしたので、プラスの財産もマイナスの財産の全ての相続を拒否する、相続放棄の手続きを選択されました。

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